ただ、逢いたくて

なんで言っちゃったの…
穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。自ら墓穴を掘るとは…自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。

勢いとはいえ、あんなことを口走るなんて…

よりによって知られた相手が悪すぎる。


何か企んでいるような表情にあたしはビクビクしながら、木村くんの言葉を待った。



どうしよう…
もし、学校の生徒にバラされたら

また中学生だった頃のような地獄の日々を過ごすの?
あんな苦しい思いは二度としたくない。

人を人形でしか見ていない冷めた目

あたしが泣いているのにも関わらず、それを面白がるようにエスカレートする陰口という名のいじめ

毎日が真っ暗で孤独だった



また、戻るの…?


そんなの……っ




昔の自分を思い出すと今にも涙が溢れそうになる。体は、ガクガク震えて自分を支えられないくらい力が入らなくなっていく。


こんなこと、最近はなかったのに…

けいちゃんや亜弥がいつもそばにいてくれたから、忘れられたと思っていた。


そう思っていたハズだった。
だけど実際は違ったんだ


忘れていたフリをしていただけで

思い込んでいただけ……



そうすれば少しは楽になると思ったから…


そんな事は裏腹に、人間の頭は楽しかったことより苦しかったことばかりを鮮明に覚えている。

忘れたくても忘れられない過去。

消し去ろうと何度も試みたが、傷はあまりにも深くて無理だったんだ。




なのに今、それがまた起ころうとしている。




< 20 / 48 >

この作品をシェア

pagetop