ただ、逢いたくて


「…離さねぇ」



ポツリと呟く木村くんの腕の力は増すばかりで、息苦しかったけど、また、温かいと感じてしまう。

こんな感情になったのはあたしにとって初めてだったんだ

小さい頃から、両親は仕事仕事の毎日であたしに構っている暇なんてなかった。
あたしの為に働いてくれるんだから文句なんて言えなくて

例え淋しいと口に出したとしても両親は困るだけだろう…

愛されてはいたんだと思う。

だけど、それはあたしの望んでいたモノではなかった



愛情という名のお金



果たしてそれを愛情と言えるのかは分からない

でも毎月、ごめんね…と一言添えてお小遣いをくれる



お金少なくてのごめんね?

ひとりにさせてのごめんね?

そばにいてあげられなくてのごめんね?


その意味は分からない



だけど唯一与えてくれたモノはそれしかなかった






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