ただ、逢いたくて
何度、他の家庭を羨ましいと思っただろうか…
他の子の何倍ものお小遣いなんてなくていい
大きくて綺麗な家に住めなくなったっていい
ただ、両親がそばにいてくれるだけで
それだけで充分だった
愛されていると実感したかった
形だけではなくて、ほんの少しでもいいから愛を感じたかったんだ。
でもそんな我儘を素直に言えなくて…
何も言わないあたしが悪いのかもしれない
けど、気づいて欲しかった
言葉にしないと分かる訳もないのに、いつか気づいてくれるんじゃないかって期待していた。
期待は本当に期待でしかなかったけど……
木村くんの温かさはあたしの傷に染みる
だけど嬉しかった。
「…離さねぇから」
その言葉と木村くんの温もりに、さっきまで震えてた体は嘘だったかのように落ち着きを取り戻し、ハァーと絞り出すかのように息を吐き出す。
だけど、涙は止まらなくて
ドロドロとした黒く歪みきった感情を流すように止めなく溢れ出てくる。
あたしはきっと…
この温もりが欲しかったんだ
触れている肌から木村くんの鼓動がトクンットクンッと聞こえてくる…
ずっと憧れていたモノ
ずっと欲していたモノ
叶わない夢だと知りながらもいつも願い続けた
「…大丈夫だから」