ただ、逢いたくて
「…っ聞きたく……なかった……」
「ねぇ、一ノ瀬さん?」
「……」
「一ノ瀬さんのこと美優って呼んでいい?」
「えっ?」
「あたし達、友達になったんだし…ね?」
「で…でも」
「あたしは美優を裏切らないよ」
「…どうしてそんなこと言い切れるの?」
何も言わない変わりにニコッと微笑む彼女。
「美優が辛い時、苦しい時はあたしがそばにいて支えてあげる。必要ないって言われてもあたしは、いつだって美優の味方だから。」
「…どうして」
「どうして…か。なんでだろうね」
「……」
「あたしが美優と友達になりたいって言った理由分かる?」
「……」
「理由なんてね…本当はないの。美優を初めて見た時、なんて冷めた瞳してるんだろうって思った。誰も寄せ付けないように、自分で壁を作って殻に閉じ籠っている美優に惹かれた。よく一人でいられるな…って。強いんだなって。」
「強くなんか…」
「うん、分かってる。本当は弱いのに強がってるだけなんだよね?でも、美優はしっかり前を見つめていた。逃げることなんて簡単なのに…動こうともしなかった。ただ、ひたすら前を向く美優を綺麗だと思った。」
「逃げたかった…出来るなら。でも、それじゃ変わらないんだよってけいちゃんが教えてくれたから……」
クスクスッ
うつ向いて話すあたしに静かに笑う。ゆっくりとあたしの背中を撫でながら
「…なに」
「あ、ごめん」
「……?」
「ごめんって!可愛いなって思っただけ」
「え?」
「美優が佐原圭哉先輩のこと好きって丸分かりで…素直だなぁって」
その言葉にうつ向くしか出来ないあたし。今顔を上げたら、絶対赤くなってるだろうし…また、小池さんにからかわれそうで。
「だからだよ。美優と友達になりたいと思ったのは」