ただ、逢いたくて

入口まで近付くと、ベンチに座って待っていたけいちゃんを見つけた。



「美優」



けいちゃんもあたしが来たことに気付いたみたいで、軽く手を振ってくれた。



なんだろうこの気持ち…

胸がいっぱいになるというか、なんとも言えない程満たされて恋しくなる。

好きな人に名前を呼んでもらうだけで、こんなにも嬉しいと思っているあたしは、きっとけいちゃんの依存性だ。

親とか友達に呼ばれるのとは違う響きに聞こえて、顔が緩んで仕方ない。

そんなあたしを見て



「ん?何かいいことでもあった?」

「ううん」



違うよと首を振り、否定を示すと、「そっか」と細く微笑むけいちゃん。



だけど



その笑みは力がなくて、あたしには無理しているような気がした。



けいちゃんは誰にでも優しいから――



優し過ぎるっていうのも疲れるのかも知れない。自分のことは後回しで、いつも他人の為に尽すけいちゃんは本当にすごいと思う。

だから、けいちゃんに憧れたり尊敬したりする人がいるんだと思う。





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