約束の小指、誓いの薬指。

何か言わないと…！


「しゅ、愁くん？今大丈夫？」


『大丈夫じゃなかったら出てないよ』


ほんのり笑いを含んだその声。
あぁ、私はなんて単純なんだろう。
寂しかった夜の橋が、光の満ちた癒しの場に変わる。同じ場所でも私の気持ち次第でこれだけ見える景色が変わってくるなんて、どれだけ彼を求めていたのかを痛いほど感じる。


「そっか、そうだよね」


電話の相手は相葉愁。29歳、職業声優。私の恋人である。
その魅力は声だけじゃなく、高いコミュニケーション能力も、アニメのキャラクターに影響されたかのようなちょっとだけ難しい言葉を使うところも、底抜けに優しいところも、とにかく全部。
そしてその難しい言葉は丁寧でもあり、そういうふうに私も話したいなと密かに憧れている。
好きでもあり、尊敬できる男性。
そんな年上彼氏。