約束の小指、誓いの薬指。
夜9時。
あれから富沢と共に対策を考えに考えてみたものの、良い案は一つとして浮かばなかった。
夜も深まったとなり、現状を報告はするために富沢の家に凛音を呼び出して話し合いとなった。


写真と婚姻届を前にした凛音は、瞬きもしなかった。


「あ…。

こんなにはっきりと撮られてるなんて…。
どうしよう、ごめんなさい。私が抱きついたりなんてしたから」


おどおどした口調。
だが、そう言いながら机から婚姻届を掴みくしゃくしゃと丸めた。


声のトーンと行動のミスマッチがひどすぎる。
怒りによって引き起こされた行動というよりも、ただ単に余計なものを排除したように見えた。
富沢と目を見合わせて、抱いたざらざらとした感情を無言で共有する。
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