約束の小指、誓いの薬指。
「申し訳ありませんが、協力なんてできません。
私はこれで失礼します」


あまりに怒りが大きすぎて、言ってやりたいことが多すぎて、何も言えなかった。
何を言っても、それを記事にされそうで怖かった。
だからただ睨み付けて、ドアの方へ歩き出した。


「待って」


教室を出ようとした私は、パシッと腕を掴まれた。
近い距離から見える阿部さんの表情は、私を引き止めようという焦りなどはなく、まだ君が知らないことがあるけどそのまま帰っていいの?というような挑発的なものだった。


「何なんですか。
離してください」


「久我さんは何があっても相葉愁のことを信じているし、自分にできるのであれば守ろうという考えなのかな?

それは素敵なことで美しいことかもしれないけど、危ないよ」


「……危ない?」


「利用される危険性があるってことだよ。
相葉愁が君を利用する。
いや、都合が良い女として扱うって言ったほうがしっくりくるのかな」


全くもってちんぷんかんぷんだ。
本当に阿部さんは、私達のことを知った上でそんな話をしているのかすら疑うほど。
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