約束の小指、誓いの薬指。
そんな私を見ていた阿部さんは背中をさすってくれたのだが、行動とは裏腹に言葉で私を追い詰める。


「大丈夫?
そりゃあショックだよね。大好きな彼氏の決定的な浮気現場を見せつけられたんだから。
この相手の女性知ってる?同じ事務所の声優だよ」


わざわざ教えてくれなくたって知っている。


私が見せられたのは、車の中で愁くんが女性とキスしている写真。
別の写真を見ると女性の顔がはっきりと写っていた。


あのクリスマスのイベントに一緒に登場してた人。
たしか名前は…、志水千代。
私と同じ年齢だったはず。


なんでキスなんか…。
重たい脳を働かせて、ポジティブな方向で考えると、これは予測不能な事故のような、1回限りのキスの可能性がある。
しかし、頻繁に行われているキスをたまたま撮られてしまった可能性だって、なきにしもあらず。
< 146 / 202 >

この作品をシェア

pagetop