約束の小指、誓いの薬指。
それから数日後のことだった。凛音から電話がかかってきたのは。


凛音の身に何かあったのだろうか。そんな嫌な考えが瞬時に浮かぶ。


「もしもし、凛音?」


そう言って電話に出ると、少し間をおいてから返事が聞こえる。


『…愁くん?
えっと、久しぶり』


いつもとは違う沈んだ声。
ピキッと嫌な予感が走る。


「久しぶり。
大丈夫か?何かおかしなことあったりしてない?」


『…うん、大丈夫。


あのさ、日曜日の夜、会って話したいことがあったからマンションに行ったんだけど…。
いなかったね。仕事、だった?』


話し出すと、凛音の声はいつもの明るい弾んだものに戻っていた。
それにホッとしたのも束の間。
日曜日の夜って言ったら…、志水を車で送った時じゃないか。
それはつまり、あのキスが起きた夜だ。
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