約束の小指、誓いの薬指。
その時、机に置いていた携帯から着信の音が鳴った。ピンクに光っているということは、相手が愁くんであるという示し。
通話ボタンを押すと、すぐに何度聞いても飽きることのないその声が届く。


『もうすぐ誕生日だな。
ちょうど空き時間もらえてさ。一緒に凛音の誕生日迎えてあげられないから、せめて電話でと思って。

1番最初におめでとうを言いたいから』


電話の向こうで愁くんは一体どんな表情をしているのだろう。私は幸せで一杯の表情だと伝えたい。


「うん!ありがとう」


こうやって、仕事だからという言葉で諦めないでいてくれるのが愁くんだ。


すると、ピンポーンとチャイムが鳴った。こんな時間に人が来るなんて珍しい。誰かが訪れる予定もない。
その音は電話越しに愁くんにも聞こえていたらしい。


「誰か来た?」


「宗教の勧誘かも。最近多いんだよね。
ちょっと待ってて」


一旦電話を耳から話して廊下に出る。
誕生日目前に宗教の勧誘なんてやめてほしい。外国人を装って英語で捲し立てて追い返そうか?それともこんな時間に来るなんてって怒鳴ってやろうか?
そんなことを考えながら玄関を開ける。
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