約束の小指、誓いの薬指。
僕の異変にいち早く気がついたのは、マネージャーの富沢だった。


「いつまでもそんな上の空でいられても困るぞ。
落ち着いたら連絡するって言われてるんだろ?
だったらそれまで待てばいいじゃん。年頃の女の子なんだから、色々考えたくなるときだってあるんだろ」


「こんなこと今まで無かった…。
やっぱり会いにいこうかな」


「馬鹿、やめとけ。
記者に見つかるかもしれないし、何より時間がない。
明日のイベント会場までもうすぐ行かなきゃならないんだ」


「イベントか…」


どうしてこんな時にまで人を楽しませなきゃならないんだろうか…。
落ち込んだ心はそんなことを考えてしまう。


そうすることが僕の仕事であり、僕に会いたくて来てくれる人がいることは喜ばしいのだが。
今一番に考えたいのは凛音のことで、このままだと心の距離も物理的距離も離れてしまう。
< 160 / 202 >

この作品をシェア

pagetop