約束の小指、誓いの薬指。
でもそれは仕方のないことで、そうしないと仕事が疎かになる訳で。


そんな言い訳を並べてみるが、やはりショックだった。こんなにも簡単に、凛音のことを忘れられている自分に。


はぁ。
でも忘れられるのは集中しているイベント中だけ。
こうやってホテルに戻ってしまえば、凛音の考えがわからなくてモヤモヤしっぱなしになる。


凛音…。
落ち着くにはどれくらいの時間が必要なんだ?
このまま…、このまま自然消滅なんてことにはならないよな?


そんなこと、させないけど。


やっぱり、東京に戻ったときに凛音に会いに行くべきだろうか。
会えるかはわからないけど…。
でも、会ってどうする?
凛音の考えが何もまとまってないのに、会ったところで悪化させるだけじゃないのか?


駄目だ…。
会いに行けない。


僕は暗い部屋に1人、ただひたすらに凛音からの連絡を待つしかできなかった。
< 163 / 202 >

この作品をシェア

pagetop