約束の小指、誓いの薬指。
慌てて立ち上がってダッシュで扉の前まで移動する。多分、いや間違いなく今年1番の速さで動いた。
急いで扉を押さえて綾が開けられないようにする。


「ここ、洗面所。トイレ、あっち」


「瞬間移動…?

あー、あっちね。
てかなんで急にカタコト?すごい慌てようだねー。ウケる。
見られたくないものがそこにあったりしてー」


綾は笑いながらトイレに入っていく。


「あはは、そんなこと…。
散らかってた荷物を全部ここに詰め込んだから…」


ううん、と洗面所から咳払いが聞こえる。
私にしか聞こえないくらいの音だったけど、体はビクリとはねる。


違う違う!
愁くんのことを散らかってた荷物だって言った訳じゃないよ!
それよりも音なんかたてて、バレたりしたら大変だよ?
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