約束の小指、誓いの薬指。
声優としてデビューしたのは10代の頃。しばらくは仕事もなく暇を持て余していて、同じ時期に声優学校を卒業した男友達と合コンに行くなどして、充実した1日だったと自分に言い聞かせていた。
だけど、声優のたまごなんて相手にされることもなく終わっていったし、合コンは自分には不向きだということも判明した。


アニメ作品への出演が増えてきたのは、20代になってから。
今まで憧れだった先輩との共演、日に日に枚数がかさばるファンレター。いつしか僕は、人気声優の仲間入りを果たしていた。


そんなある日、事務所の先輩でとてもお世話になっている久我一弘さんの所に子どもが産まれたというので、お祝いに行くことにした。
何度もお邪魔している久我さんの家は立派な一軒家。
少し前に来たときには、出迎えてくれる奥さんのお腹は大きく、そろそろ産まれるんだなどと、とても嬉しそうに話していた。
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