約束の小指、誓いの薬指。
和室に布団が敷いてあるのが目に入った。そこに赤ちゃんがいるのだろう。
当たり前にそう思ったのだが…、そこにいたのは布団の横で赤ちゃんを抱いて座る1人の女性だった。


「…」


誰かいる。
予想外の展開。
赤ちゃんが寝ていると思い込んでいたのだから。


赤ちゃんを抱いているのは若い女性で、あやすようにとんとんと背中を叩きながら笑顔を向けている。


誰だ…?
だがそれよりも驚いたのは、赤ちゃんを見る女性の笑顔にぎゅっと心臓を掴まれたような感覚に陥ったということ。

まさか…。いやあるわけない。そんな一目惚れなんて子どもじみた真似を僕がするはずがない。
…一体何を焦っているんだ!
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