約束の小指、誓いの薬指。
でも無視された訳ではない。彼女はこちらを見ていないものの、ぺこりと頭は下げてくれた。
ただ、僕は彼女に向けたこの満面の笑顔をどうしたらいいのかわからない…。


「人見知りが激しくてね。
仲良くなれば話してくれるんだが…」


「先に言ってくださいよ」


久我さんに今更感極まりない情報を与えられ、ガックリしてしまう。


「凛音、相葉が桃のお祝いに来てくれたんだ」


「桃ちゃんの…?」


りおん、そう呼ばれた彼女は久我さんの呼び掛けには自然な反応を示した。
僕としてはその場から彼女を見ていたかったが、久我さんに促されて畳の上に座った。それを見た彼女は、恐る恐るといったように赤ちゃんを僕に渡した。
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