約束の小指、誓いの薬指。
僕はその夜、年甲斐もなく喜び舞い上がっていた。


次の日も舞い上がりはおさまることなく、そのいつもとの違いを富沢には目ざとく見つけられた。


「久我さんの姪!?
まじかよ…。
事務所の先輩の姪でしかも女子大生って、すげぇ所に手出したな」


「手出したとか言うな」


「それで、名前で呼ばせてもらうことになったんだ?
でもそれって久我ちゃんにとったら普通なんじゃねーの?

だって数年前までアメリカに住んでたのなら下の名前で呼び合うことが日常だろうし、お前が久我さんって呼んでたら叔父のことなのか自分のことなのかややこしいだろうし」


高まっていた気分に冷水をぶっかけられたようだ。たしかに、考えてみればそう思えて仕方ない。彼女が8歳も歳上の僕なんかを意識するはずがないのか…。
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