約束の小指、誓いの薬指。
でもこの高すぎる緊張度の中で、その窮地を脱する術を私は持ってなどいない。というか、慣れない状況に今にも卒倒してしまいそう。


「村上さん、事務所の先輩のことはもういいですから。
久我さんが困ってるじゃないですか」


そんな私を救ってくれたのは、紛れもなく愁くんだった。


「あ、そっかそっか。
じゃあ、久我さんはこの8人の中で1番好きなのは誰ですか?
選ばれた人は、何か久我さんが喜ぶことを言ってあげましょう!という企画です。会場の皆さんも自分がこの場にいることをイメージしてくださいね」


1番好きな人!?
正直に言ったら、そんなの決まって愁くんだけど、ここで愁くんを選んでしまったら私の心は持たないかもしれない。
だからって他の人を選ぶのも嘘をついてるようで気が進まない。
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