Strawberry Night

唯それだけなのだけど、余りにも憂鬱過ぎてまた深い溜息を零す。
けれど本当に憂鬱なのはきっと彼女の方だろう。俺が物思いにふけることもこのようなアンニュイな感情になる資格など許される通りなど無いだろう。何故ならば俺はこれまで優柔不断さで彼女を傷付け、更にこれから言葉で傷を付けようとしているのだから。そして呼び出したことで俺が何をしようか、何を伝えようとせんとしていることは勘が鋭く感情の機変に敏感な彼女にはお見通しだろう。


「…そんな溜息吐かなくてもちゃんと来るから。」

目を伏せた途端、耳元に溢れ出た言葉。思わず少し大きめな反応を示して彼女の失笑を買う。
栗色の長い髪を一つに緩く結い、何時もと変わらない指まで隠れている袖の長いセーターにジーンズとローヒールのパンプスの姿。
何一つ変わらない。普段通りの彼女。
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