それはいつかの、
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あの日の約束が、私をずっとこのセカイに留めていた。君という枷がなければ、私はあの日にこのセカイから消えていた。
君は今、どこにいるのかな。
見えた人影が君だったのかは分からない。着いた時には、もう既に人影はなかったから。
君は、上手いことをしてくれたね。
君がいなくなっても、私は君という枷に縛り付けられたまま、約束を守り続けている。
あの日と変わらないマンションの屋上の柵に背中を預け、私は傘を差さぬまますっと空を見上げた。相変わらず振り続ける時雨に、あの日を繰り返し繰り返し思い出す。
――――セカイが、止まってしまえばいいのにと思った。
君のいたセカイが、私のいるセカイが、止まればいいと。変わることなくあの日のまま、あの日々のまま、君とずっと一緒にいられたらいいのにと。
君がいなくなってから、余計に強くそう思う。約束も枷も、忘れていないからこそ。