それはいつかの、
何があっても、ずっと君を
――――愛してる。
***
いつもフェンスにもたれて空を見上げる君を、僕はいつも眺めていた。僕はどうして君がそこにいるのかも知っているし、いつまでそこにいるのかも知っている。きっと、君がそこからいなくなる日が来ないことも知っている。
君はそこでずっと人を待っていた。恐らく五年前からずっと。待ち人のことを僕は知っている、けれど話したことがあるのかというと分からない、ということになる。あれを話したうちに入れるのなら話したことになるし、入れないのなら話したことにはならない。微妙なところである。
君の待ち人は、唐突に君の前から消えた。君がそこで待ち始めたその日、ちょうど五年前のあの日に。
僕は君の待ち人がいなくなったそのときに君の傍にはいなかったから、君がどんな行動を取ったとか、どんなことを言っていたとか、そんなことは分からない。君がどんな思いで、想いで、待ち人を待っているのかも僕は知らない。君がもし待ち人と再会できたとして、どんなことを言うのかもするのかも、僕には、想像もつかない。
否、つかないのではないのかもしれない。想像しようとすればいくらでも出来るのだ。僕はそれをしたくないだけ、なのかもしれない。
だって待ち人が君の前に姿を現すことはないからだ。待ち人――彼は、どうしようもない理由で君の前から姿を消したのだから。
かしゃん、と遠くでフェンスが音を立てる。そっと音のした方を盗み見ると、君が顔を腕で覆って蹲るのが見える。それもいつものことで、僕はそっと踵を返す。この先は僕が知るべきではない。
賑わう表通りとは正反対の寂れた裏通りのとあるアパートの一室。そこに僕は二年前から住んでいる。君のいる表通りのビルとはそんなに距離が離れているわけではない。にも拘らず、僕が君と直接会ったことがないのにはちゃんとした理由がある。
君が生きるのは、表の世界。僕が生きるのは、裏の世界。
裏の世界とは言ってもヤクザとか暴走族とかではなく、ただ単に深夜のコンビニでバイトをしているだけである。週に六日、深夜のみのバイトを入れているが、自分ひとり生きていくには十分な給料。但し贅沢は出来ないが、たまに貰ってくる店頭には出せないスイーツなんかはある種贅沢だ、なんせただである。