『あの時、君は……』
「なぁ、瞳?」
「何?」
俺は、零れてきそうな嗚咽をかみ殺す。
「忘れんなよ……?」
「え……?」
「俺みたいなさ、馬鹿で瞳の事考えなかった『彰』って男、忘れんなよ?」
俺は、精一杯の笑顔を瞳に見せた。
目尻に涙がついていたかもしれない。
「変な彰。忘れるはずないじゃん! 私達、ずっと恋人同士だよ」
瞳は、俺を優しく抱き締めた。
いつもの俺なら、そのままその場の雰囲気で瞳をむちゃくちゃにしてたかもしれない。
でも、今日はそんなことできなかった。
「……ありがとう……」
そう俺は、ぽつりと呟いた。