『あの時、君は……』




「ほら、もうちょっと! あと少し!」
「ったく、こっちが苦労してるのみたら、すぐこれだ」

俺はハンドルを強く握り、ペダルも力強く漕いだ。
瞳は、スピードが早くなるのを感じると、ぎゅっと俺を掴んだ。
俺の後ろで抱き付いている瞳は、とても楽しそうな声だ。
そんじょそこらのキャピった声ではない、温かな声。
俺達しかいないような町には、俺と瞳のこの楽しい会話しか響いていなかった。




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