『あの時、君は……』
聞こえていたかどうかは別だ。
でも、電車の中にいた瞳はほほ笑んだ。
ガタついている自転車を思いっきり漕いで、風を切った。
始めは電車に……瞳に追いついていたが……どんどん離されて行った。

俺の姿を瞳に見せつけようと、俺はできるかぎり大きく手を振った。
一瞬、自転車のバランスが崩れたが、それでも手を振った。
< 168 / 203 >

この作品をシェア

pagetop