『あの時、君は……』
七美ちゃんは、いきなり上がり込んで来た。

「なんで俺ン家来たの? ってか、家知ってんの?」

七美ちゃんは、悪びれぬ顔で俺を見て言う。

「彰君さ、瞳と付き合ってんでしょ?」

……言ってないのに……

「なんでそんなことになんだよ」
「だって、一緒に帰ってるの、私みたんだもん」
「七美ちゃんとも帰った事くらいあるだろ?」

七美ちゃんが俺を睨む。

「……私の時、手、握ってくれなかったし……」

……こいつ……
つけてたな……

俺は、冷や汗が背中を伝う感覚しかなかった。
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