『あの時、君は……』
雨はしとしと降っている。
おかげで制服もセットしていた髪もじっとりだった。

早く風呂かシャワーしてーなー。
だから梅雨って嫌いなんだよ。

俺は、そう思いながら歩いていたため、瞳の言葉はさっぱり耳に入っていなかった。

なんだか、最初はにこにこして一人でしゃべっていたが、俺が相槌しか打たないと気がつくと、声のトーンが落ちて言った。

俺の耳にしっかり届いていたのは、このにっくき雨の音だけだ。
正直、ヘッドホンつけて音楽聞いてた方が、どんだけ楽しいか、と俺は思った。

やっぱり、下校を一緒にするのは……
面倒だった。
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