『あの時、君は……』
「なんで?」
「私の顔見て……溜め息ばっかだから」

俺は、笑って見せる。

「そんなんじゃねーって」
「私は、彰と一緒にいられる時間、全部大切なの。だから……嫌なら、嫌って言って……?」

あ……
この感じ……
瞳泣くかも?

「ごめん……そんなつもりじゃなかったんだよ……」
「んじゃ、私の話、聞いてた?」

……う
困った……
話なんて……
これっぽっちも……

俺は固まってしまった。

「これ、あげる」

瞳は、作り笑いをして、銀色のブレスレットを俺に渡した。

……えっと……
これは、どういう意味で俺に渡したのかな……?

話を聞いていなかった俺は、そうしか思えなかった。
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