感情方程式。

「あれ、怒らないんだ?」

多分、笑っている。
今の私にそんなことを考える余裕なんてなくて、状況に追い付くのも辛いのだ。

「俺は君が心配なんだよ。」

優しく、そう呟いた。
どうして私の心配を、この人はしているのだろうか。

「わかりません。」
「え?」
「どうして先生が、私の心配をする必要が…あるんですか?」

どうしたら良いかわからなくて、額を先生の胸板にくっつけ、床のカーペットを見つめながら勇気を出してみた。

「どうしてかはわかんないよ。」
「は?」
「すぐ怒る癖止めなよ。」

その言葉と同時にギュッと力が強くなった。
……痛い。

「君が大きなモノ抱えてるって何となくわかる。ただそれだけ。それを楽にさせたいだけ。そんな、先生がしたいことだよ。」
「……。」
「それで知りたいだけ。菊池さんのこと。」

「ダメかな?」くすりと笑いながら私の肩に顔を疼めてきた。
教師がなにしてんのよ…。
確かに此処は入り口から四角だから見えることもない。
外からも気付かれることはまずないだろう…。


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