感情方程式。
「帰るぞ。」
「…うん。」


懐かしいと言っても去年の話だがこの感覚に違和感を持つ。
優しく笑ってる彼は今も変わらない。

「お前緊張してる?」
「……別に緊張なんてしてない。」
「じゃあ何で目合わせねーの?」
「うるさい。」
「素直じゃねえな。」


また笑った。
どうしてそんなに笑えるのだろうか。
私にはわからない感情であり仕草だ。


てっきり奏太さんのことを聞かれるのかと思っていたら全くそのことには触れてこなかった。
蓮なりの気遣いだったんだと思う。
ジュースも奢ってくれたし…。


「ありがとう。」
「気にすんな。」
「でも、私がミルクティー好きなの覚えてるんだね。」
「昔から飲んでばっかじゃん。」


喉に流し込む。やっぱり美味しい。
高校生になってからコーヒーに挑戦するものの、私の口はまだ子どもで学校では隠すのに必死だった。


「また一緒に帰らね?」
「別に私は構わないよ。」
「じゃあ、きーまり。家まで送るよ。」


私は気付かないうちにたくさん話をしていた。
思っていた以上に笑って過ごしていた。

「…蓮。」
「ん?」
「ありがと。楽しかった。」
「………お、おう。良かった。」


頬を少し赤らめながらも笑顔で「じゃーな!」と手を振りながら帰って行った。
それに答える様に私も笑顔で返せた。
笑うことでこんなに気持ちが良くなるなんて、久しぶりだった。


「(良い放課後だった、な…。)」

出来事を思い出し、クスリと1つ笑ってしまった。
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