感情方程式。
「ココ、歩いても大丈夫なの…?」
「会っても何とかするよ。そのために帽子被ってきたんでしょう?」
「うん、まぁ一応……。」
「なら大丈夫さ。」

その言葉をまず聞いて安心した。
最悪うつ向いておけば大丈夫か。
歩き出した時に、手を差し伸べられた。

「ん。」
「え?」
「え?じゃない。一緒に歩くんだから。」
「…大人っぽくココは腕組んでいい?」
「それでも全然俺は嬉しい。」
「あ、そう。」

言葉では素直にはなれない。
だからその代わりに行動で示した。
右腕を奏太さんの左腕に絡め優しく掴んだ。
すると奏太さんがくっついてくる。

「何…。」
「もっとくっ付いていいのに。」
「う、うん…。」

少しくっ付いてみる。
そしたら奏太さんは撫でてきた。
「離れないでね。」と耳元で囁かれたせいで耳があっつい。
うつむきながらも、一緒に歩くことに集中した。

「あ、あのさ。ちょっと買い物付き合って。」
「いいよ。」

暫く歩くとメンズスーツのショップに着いた。

「何が欲しいの?」
「ネクタイ選んで欲しいんだよねー。」
「……。」

まだ学校生活をしているから正確ではないけれど、一応彼女なのか…。
そう実感した瞬間だった。
取り敢えず店内を回った後、自分の中で絞ったのは二種類だった。

一つ目は、紺色に赤のラインが斜めに入っているもの。
二つ目は赤と紺のチェック柄。

すごくカジュアルなのは二つ目だ。
どちらも赤が入ってるのは普段暗い色しか身に付けていないから。

「どっちかにするの?」
「うん。」
「じゃあ二つにするー。」
「え⁈」
「迷ったのならどっちも買う。麻璃が選んだのだし。」

私からネクタイを取り上げ、そのままお会計を済ませた。
大人の余裕なのかはわからないけれど、何なんだ…。



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