感情方程式。

ーーー

「……。」

私は今、オーブンレンジの前で待機していた。
グツグツと表面が少しずつ焦げてきていて、チーズの匂いが漂う。

「飽きないねぇ。」
「…早く食べたい。」
「はいはい。」

奏太さんの家に今いるわけだが、1LDKのマンションだった。
やはりきちんと整頓されていて、家具もお洒落だった。
後ろから奏太さんが抱きついて来た。

「麻璃を早く食べたい。」
「はぁ⁈何でそんなくさい事言えるの⁉︎」
「ごめんごめん〜」

彼の言葉をほぼ流してグラタンを見つめる。
するとチーンと1音が響き私は直ぐに開けた。

「あっついからちょっと待って。」

運んでくれる様だったので、テーブルへと向かった。
奏太さんが作った料理でもあるため、食べるのが楽しみだ。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
「ちゃんとふーふーしてね。」
「うん。」
「いただきますっ。」
「召し上がれ。」

ニコッと笑った顔に、意識するのを避けていたため、不意打ちすぎて顔が熱くなった。
それを隠すかの様に私はグラタンをつつく。

「…美味しい。」

嬉しそうに奏太さんが笑っているのがわかる。
何気、今日初めての食事だったためどんどん食べ進んでしまった。

「満足？」
「うん。また作って欲しいくらい。」
「いつでも作ってあげる。」

「付いてるよ。」と唇を触れられた。
反射的に身体がビクッと跳ね上がった。
くすぐったかったせいで反応してしまった自分が恥ずかしかった。

「お風呂にする？」
「早目に入ろうかな…。」
「一緒に入る？」
「ごめんなさい。ちょっと何を言ってるかわからない。」

隣に座ろうとした奏太さんから1人分離れようとするが抱き締められてそのまま倒れた。
いつもと違う表情に、私の心が固まる。
いやらしく笑う彼の表情に目が行ってしまっているその時、緊張が高まった。

「我慢の限界。」
「ッ……。」

どうして彼はこう、全てストレートに言ってくるのであろうか。
電気の逆光のせいで表情が伺えない。

「ち、ちゃんと食器片付けてからね…。」
「………はーい。」

案外素直で驚いたが、そこから洗い物に取り掛かった。
本当にどうなるかわからなくて緊張した…。
と、考えつつも余裕のある様な態度で乗り越えた。
そこで私は、自分の荷物の少なさに気づいた。

「あれっ…！！」

部屋着を忘れた。
別に今の服で1日を過ごすのも悪くは無いがやはり居心地が悪い。

「忘れたんでしょう？」
「何でわかるの？」
「荷物少ないなって思ってたから…。」

「はい。」とグレーのスウェットとを渡された。
…彼シャツ的なものか。
私は取り敢えず受け取った。