感情方程式。
私はこの少し気不味い空気を濁す為に口を開いた。

「あ、ありがとう。」
「いえいえ。…今日は帰ったら勉強するの?」
「うーん。ゆっくりするかも。」
「そっか。じゃあ後で連絡してもい…ッ‼︎」

彼の今日のネクタイは早速私が選んだデザインの物だった。
本当に使うとは思ってもいなくて、それが嬉しかった。
そして寂しい顔をしている奏太さんを見るのが耐えられなくて、そのネクタイを引っ張り私は唇を重ねた。


「…麻璃?」

動揺して目が泳いでいた。
少しずつ頬を染め上げていくのを覚えている。

「そんな顔したら帰れない。」
「え?」
「寂しいなら寂しいって言ってよ。」
「俺顔に出てた?」

「あれ〜?」と照れ笑いをしながら誤魔化す彼に私は口が空いた。
……こんな可愛い顔もするんだ。

「寂しいよ。でも、テスト終わって終業式迎えたら夏休みで色んなところ出かけれるし。大丈夫。」
「いや、口にしてくれたって良いのに。」
「勉強頑張ってるから止めておこうと思って。別に放課後、化学聞きに来てたし?」
「………。」

彼の手が私の頬に触れ遊びだす。
軽くつねられたそこは熱を帯びる。

「なにふるの…。」
「愛情表現。」
「ぶぁか。」
「汚い。唾飛んできた。」

そう言ってきて無性に腹が立ったので優しくパンチした。
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