空を見上げて、月を描いて

 初めての受験。


 余裕を持って自宅を出て、会場には1時間前に着いていた。


 だけど、俺なんかよりもっと先に来てた学生が、何人もいた。


 みんな参考書を開いて、一心不乱に問題を解き続けたり、じっと黙読していた。


 ピリリと張り詰めた空間。


 席に着くと緊張感がさらに増した気がした。


 ……こんな感じだったんだなって、思った。


 美月もイチも、こんな感じで試験を受けたのだろうか。


 問題用紙と解答用紙が配られるまでは、そんな感じで余裕でいられたのに、試験開始の合図とともにそんな余裕は飛んで行った。


 周りのペンを走らせる音がやけに耳について離れなくて、全然集中できなかった。


 わかるはずの問題に苦戦して、カツカツと誰かがペンで机を鳴らす音にイラついて。


 気が付けば3科目なんて終わってた。


 確実に落ちた。


 あの時は冷や汗が止まらなかったし、受験ってこんなにきついんだと初めて知った。


 4日後に控えたもう1校の試験のことを考えると、胃が痛くなった。


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