空を見上げて、月を描いて
イチには「場慣れすることも大事だ」って言われたけど、なにかと初めてのことが多い俺が慣れるはずもなく、次の試験日を迎えたけど完敗の予感。
一発目の時よりは落ち着いていられたけど、それでもこの緊迫した空気には並大抵の精神じゃ到底敵わない。
受けた2校前期日程、どちらも結果が出るのはそれぞれ10日後。
俺には、チャンスが4回しかない。
そのうちの半分が、もう終わってる。
もし前期で両方落ちてたら、すぐに後期受験の申し込み。
あと1か月も経たないうちに、次の試験。
言わば、ラストチャンスだ。
こんなに上手くいかないもんなのかって、かなり落ち込んだ。
けど、イチは俺のことをよくわかっていて、発破をかける。
「もし落ちたら、お前がたとえどんなに覚悟決めてても話さないからな」
眉も目も吊り上げて、俺の背中を力強く叩いて「がんばれ」って、珍しく抑揚がはっきりした声でそう言った。