空を見上げて、月を描いて

「合格……!」


 3月中旬、後期に受けた最後の試験、俺が一番手応えを感じていた大学に、見事受かった。


 その前に受けていた1校は落ちていて、これが本当に最後の頼みだった。


 一瞬前まで絶望感でいっぱいだったのが嘘みたいに、今は晴れやかな気分。


 毎日勉強漬けだったあの日々が報われた。


「イチ、合格! 合格してた俺!」


 興奮が冷めきる前にイチに電話をして結果を伝えると、イチは俺が高認試験に受かった時と同じように「おめでとう」って言ってくれた。






 美月と離れた1年間。


 自分のために、がんばった。


「近いうち、会えるか」


 イチのその静かだけど緊張した声に、どくりと心臓が音を立てた。


 知りたいことを教えてもらえる。


 美月のことを知ることができる。


 ……自分のことだけで精一杯だった、長くて短い1年間。



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