空を見上げて、月を描いて
“4人”の定かな記憶は俺にはなくて、素直に首を横に振る。
そんな俺を見たイチは、少し表情を引き締めて
「奏汰。話さなきゃいけないことがある」
いつ聞いても胸に響く声でそう言った。
イチの言葉には、嘘がない。
良くも悪くも本当のことしか言わないこと、もう知っている。
記憶を失って、一緒に毎日を過ごして、“親友”になって。
いろんな面を見てきたから、知ってるよ。
真っ直ぐに射抜くような瞳に曇りがないこと、会った時からわかってた。
だから、俺は怖かったんだよ。
「……うん。俺もずっと聞きたかった」
現実を知ることは、とても怖い。
ペンダントの中身を知っている今、イチから語られる話は大体予想できるけど、人からそれを聞いてしまえば本当に信じなきゃいけなくなるから、怖かった。