空を見上げて、月を描いて

 “4人”の定かな記憶は俺にはなくて、素直に首を横に振る。


 そんな俺を見たイチは、少し表情を引き締めて


「奏汰。話さなきゃいけないことがある」


 いつ聞いても胸に響く声でそう言った。


 イチの言葉には、嘘がない。


 良くも悪くも本当のことしか言わないこと、もう知っている。


 記憶を失って、一緒に毎日を過ごして、“親友”になって。


 いろんな面を見てきたから、知ってるよ。


 真っ直ぐに射抜くような瞳に曇りがないこと、会った時からわかってた。


 だから、俺は怖かったんだよ。


「……うん。俺もずっと聞きたかった」


 現実を知ることは、とても怖い。


 ペンダントの中身を知っている今、イチから語られる話は大体予想できるけど、人からそれを聞いてしまえば本当に信じなきゃいけなくなるから、怖かった。

< 30 / 47 >

この作品をシェア

pagetop