空を見上げて、月を描いて

 なんとなく、4人で一緒にいた日常があった気がして、なんとなく、イチが話すその内容に懐かしさを感じた。


 “葉月”の顔は、思い出せないままだけど。


「奏汰。こんな写真、お前の家のアルバムにもなかったか」


 ……思い出せないままだったけど、イチが差し出した数枚の写真を見て、じわりじわりとなにかが込み上げてくる。


「これが、“葉月”だ」


 小学校の頃の写真。


 四角い枠の中には、俺とイチだろう男の子、それから美月。


 ……それから、美月に引っ付いて笑いながらピースする、美月と全く同じ顔をした女の子がいた。


 どの写真を見ても、4人仲良く映ってる。


「見てないなら、探してみろ。あるはずだから」


 イチはそう言って、大事そうに写真をしまい込んだ。 


 ……あったよ、同じ写真。


 誰なのかわからなくて、仲が良かった子なんだろうと思ったけど、やけに似てるなとかそう思うくらいで、美月にそっくりなこの子が“葉月”だなんて少しも考えなかった。


 違う、考えたくなかっただけだ。


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