空を見上げて、月を描いて

「お前が忘れてること、間違いは、これだ。意味わかるか」


 少しずつ少しずつ、思い出されていく。


 走馬灯ってこんな感じなのか、って思うくらいだった。


 小学校の時の記憶。


 美月と葉月。


 そっくりの双子。


 なぜか俺は美月が美月だってわかって、同じように葉月のこともわかっていて、名前を呼び間違えたりすることなんて一度もなかった。


 イチも、同じだったよな。


 それで、中学も同じでずっと変わらず一緒にいて、そして……。


「……美月は、もう本当にいないんだな」


 ぽろりと目の端から、涙が零れ落ちた。


 ペンダントの中身を知って、イチの言った『覚悟』の意味を考えて、俺が想像したチープなドラマでよくある『最期』。


 全部が、結びついてしまった。


 ……ペンダントに入っていたのは、白い紙に包まれた白い粉。


 紙の隅に、“3月5日”と小さな字で書かれていた。


 この日付は、あの事故の日だ。


 横断歩道に猛スピードで突っ込むトラック。


 そこを渡ろうとしていた美月。


 俺は美月を助けたくて……。



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