空を見上げて、月を描いて

「奏汰。葉月はお前のことだけ、いつもずっと想ってた」


 美月以外の記憶を失くした俺、身代わりになった葉月。


 部屋のプレートが裏返しになってた理由。


 葉月が隣からいなくなった理由。


 葉月のこと、気持ち、全部聞いて、全部をすぐに受け止めるのは難しくて、だけど俺が『忘れたこと』で誰かを傷付け続けていたって知った。


 きっとそれは今も続いてる。






「俺は迎えに行きたい。あいつのこと」


 俺のために消えた人。


 俺のことを想って傷ついて、最後までそれを貫こうとしている人。


 俺のために、身代わりになった人。





 俺の、大切な人。





 “美月”として一緒にいた時間、俺は間違いなく“葉月”が好きで、葉月がいたからがんばれた。


 俺だって、迎えに行きたい。


 行けるものなら。


 だけど、ぐるぐる混ざる感情は俺の本心を掻き乱す。


「おまえはまだ、“あいつ”が好きか」


 イチの問いかけに答えられないまま。




 美月の死を知り、葉月の愛を知った。


 もうひとつの覚悟を決めきるまで、あと2年。


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