空を見上げて、月を描いて

 忘れてしまったことを謝りたくて、愛を知って、一緒に過ごす間ちゃんと好きだったこと、言えてない。


 どうせ会えないって諦めてた。


 だから、とっくに答えなんか出てたくせに、いろんなことを理由にして逃げていた。


 世間体とか、葉月の気持ちはまだ俺にあるのかとか、バカみたいに諦める理由を探してた。


 決意を固めたのが、この時だった。


「お前、まだあいつのこと好きか」


 これを聞かれるのは二度目だ。


 一度目は2年前、“あいつ”が誰かをあやふやにさせたままだった時。


 今はもう、はっきりと答えられる。


「ずっと、好きなままだよ」


 葉月のこと、好きなままだ。


 俺がそう言うと、イチは安心したような、だけど苦しそうな顔で「よかった」とだけ小さく呟いた。


 ……イチは変わった。


 仕事をしてからなのか、それ以前にイチを変えるなにかがあったのか定かじゃないけど、前はあまり喋らない方だったのによく話すようになった。


 イチをそうさせたのはきっと、葉月なんだろう。


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