空を見上げて、月を描いて

 もう二度と会えないと思ってた葉月が、目の前にいる。


 綺麗な涙を流す葉月が、今ここにいる。


 言いたいことは、たくさんあった。


 たくさんつらい思いをさせたこと。


 嘘を吐かせたこと、忘れたこと。


 俺のために離れることを選んで傷つき続けていたこと。


 たくさん謝りたかった。


 謝りたいことなんて山ほどあった。


 この7年間、吐き出しきれないほどの想いを溜めた。







 毎日会社帰り、思い出の丘に立ち寄っては、渡された三日月のペンダントと携帯電話を握り締め、美月に相談していた。


 それはきっと、ひどいことなんだろう。


 でも、知ってた。


 美月がきっと、怒ってるだろうこと。


 葉月を泣かせたことを、怒ってるって。


 懐かしい、美月の携帯電話のメールの履歴をさかのぼって見つけた一文。


 『そう言えば小学校の時、奏汰葉月のこと一回泣かせたよね? それだけは今でも許してないから!』


 きっと俺が天国に行ったとき、美月は怒り散らすだろう。


 俺なんかよりよっぽど、葉月のことが大好きで大切だったんだろうから。


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