空を見上げて、月を描いて
8月上旬に試験を受け、結果が来たのは翌月の始め頃。
俺よりも、母さんたちの方がそわそわしていたと思う。
通知の封を開け、結果は……『合格』。
手放しで喜ぶ両親を尻目に、俺はイチに報告の電話をかけていた。
合格した喜びより、イチが言っていた『話したいこと』の内容が気になって、居ても立ってもいられなかったから。
何度目かのコール音でぷつりとそれが途切れ、口を開こうとした瞬間。
「……おめでとう」
俺が話し出す前に、電話の向こうからイチの声が聞こえた。
結果もまだ言ってないのに、もし俺が落ちてたらどうするんだよってその時は思った。
だけど、がんばってる俺を一番近くで見守って応援してくれてたのはイチだったし、合格することを信じてくれてたんだって気付いて、ただ「ありがとう」って言った。