空を見上げて、月を描いて

 イチの言葉には嘘がなく真っ直ぐで、だからひとつひとつの何気ない言葉にさえ重みがある。


 大事なことを話す時は、場の空気を一瞬で引き締める。


 イチのそういうところが、前からすごいって思ってた。


「……半年で、いろいろ覚悟できるか」


 電話越しで聞いたイチの声は重く深く、胸の奥まで染み渡るようだった。


 前にイチが言ってた、俺に話したいこと。


 それは、美月のことだってなんとなくわかっていたけど、こういうふうに言われると緊張する。


 覚悟って、なんの覚悟だよって。


 今までいろんなことを考えてきたけど、イチのその一言からは「そんなんじゃ甘い」、「まだ足りない」って意味を読み取れた。


 イチは、誰よりも美月のことを知ってるんだと思ってた。


 それが悔しくて、たまらなかった。


 俺はなにも知らなかったのに。



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