オフィス・ラブ #3
「大塚」
「はい」
涙声で返事をすると、また、大塚、と呼ばれる。
「…はい」
呼んでおきながら、何も言わず。
なんだか知らないけど、たまらないとでもいうように、ぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。
ね、苦しい、苦しい。
どうしちゃったの、新庄さん。
また涙が出てきた。
もう嫌になる。
そんなことされたら。
山ほどあったはずの、言いたいことが。
全部、どうでもよくなるじゃないか。
ふと、拘束する力が弱まって、髪に優しく口づけられた。
顔を上げると、目が合う。
腕の中の私を見おろす、その瞳は。
こんな空っぽの私ですら、確信を持たざるを得ないくらい。
嬉しいんだと。
もう間違いなく、語っていて。
なんだよ、それ。
そんな顔するくらいなら。
もっと連絡してよ。
不安に、させないでよ。
「まだ泣くのか」
そう吹き出されて、むっとする。
けど言い返す前に、唇をふさがれた。