オフィス・ラブ #3

「はい」

「よし」



素直に返事をすると、優しく微笑んでくれる。


なんだよ、偉そうに。

そっちの「言いたいこと」が少なすぎるせいで、私が苦労してるの、わかってるの?


そんな、すねた気分になりながらも。

これまで、事実ばかりがあって、もやもやと、どう表現したらいいのかわからなかった、私たちの関係が。

ようやく、二人で一組なんだと、形が定まった気がして。

心はふわふわと、酔ったように温かい。


ちゃぷんと音を立てて、早速いいですか、と手をあげると、新庄さんは眉を上げて私を促した。



「車は…」

「ああ、その件もあって、電話しようとしてたんだ」



直後に、お前からかかってきて。


えっ、そんなニアなタイミングだったの。

まさしくかけようとしていたところを、あの人に見つかったってことか。

それで、携帯を置きっぱなしにするほど動揺したんだとしたら、かなり面白い。



「向こうに駐車場を借りたんだよ」

「…長くなるんですか、出向」



おそるおそる訊いてみると、いや、とあっさり否定された。



「お前が具合悪くなったろ。あの時、やっぱり車がいるな、と思って」



そうしたら夜中でも、運んでやれるし、安心だろ。


立てた片ひざに、ほおづえをついて。

なんでもないことのように、そう言う。



「それも伝えようとしたのに、お前が…」



そこで、ぎょっとしたように目を見開いて、言葉を切った。

私がぼろぼろと、涙をこぼしはじめたからだ。

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