オフィス・ラブ #3
バスタオルをしっかりと押さえて、答えてくれるまでは協力しない、という意思を示すと。

新庄さんがため息をついて、身体を離した。



「再来週だろ」

「だろ?」



共通の認識のように言われて、訊き返す。

義務は果たしたとばかり、新庄さんがタオルに手をかけるのを、払いのけた。

露骨に舌打ちをして、苛々と私を見おろす。





「高木の結婚式だ」








だけど実際のところ。

私たちの再会は、それよりちょっとだけ、早かった。







堤さんに言われて、私はふたりぶんのお茶を用意して、応接室に向かった。

クライアントの本部長が、なぜかうちの会社に来ているらしい。


トレイを持って、エレベーターを降りる。


天井から床までスモークガラスに覆われた、応接室の並ぶカーペット敷きの廊下に足を踏み入れると。

指定された部屋の、重厚な木のドアの前に、長身のふたりが立っていた。

新庄さんは腕を組んで、堤さんは腰に手をあてて、ふたりしてドアに耳を寄せて、中の会話を盗み聞いてでもいるようだ。


不思議な光景なんだけど。

何、やってんの?


声をかけようとすると、ふたりがこちらに気づいて、同時に人差し指を立てた。

つい、私も同じように、指を立てて口をつぐむ。


新庄さんが堤さんに対して、行け、というように無言で私を親指で示した。

堤さんはうなずいて、私を少し離れたところに連れていく。

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