オフィス・ラブ #3
冬の、優しい青の空。
常緑のガーデンで、純白の花嫁と、お酒を断れなくて真っ赤になった新郎を囲んで、写真撮影が行われていた。
披露宴は、祝福と、幸せと、喜びと、たくさんの花と、温かい笑いに満ちて。
「新庄さん、かっこいい」
きちんとネクタイを締めた彼が新鮮で、思わず正直な感想がこぼれる。
ガーデンの一角に、背丈ほどのグリーンで仕切られたコーナーがあり、そこが喫煙スペースになっていた。
新庄さんの姿が見えなくなったので、絶対にそこだと見当をつけて行くと、案の定。
黒に近いスーツに、アイスシルバーのネクタイをつけている彼は、いつもよりだいぶフォーマルで。
けどそんな格好に似あわず、ポケットに片手を突っこんで、気持ちよさそうに一服していた。
私を認めると、煙草を口から離して言う。
「そんなこと、初めて言われたな」
えっ、嘘、見るたび思ってるけど。
そういえば、わざわざ口に出したことはなかったかもしれない。
「新庄さんは、かっこいいですよ」
隣に立って、今までのぶんも、丁寧に言い直すと、彼が楽しそうに、光栄だ、と笑った。
「交渉は、どうでした」
「認めさせたに、決まってるだろ」
彼と、ユニット内で異動を余儀なくされた数名は、グループ長と現所属長を相手に、交渉にあたっていた。
今いる部署で、業務時間の2割を、元の部署の業務にあてていいという規則を、敷くためだ。
それは、一定期間が過ぎたら、必ず全員を呼び戻すという約束に他ならない。
もとよりグループ長は、その腹づもりだったのだけど。
それを公約化して、周知の事実にしてしまおうというのだった。
逆に言えば、今の仕事を8割の時間でやってみせる、という宣言でもあって。
どんだけ強気な人たちなの、とあきれもした。