オフィス・ラブ #3
やりかたが、あんまりだっただけで。

こういう見直しや、代理店の取り扱い額の偏りをなくすということ自体は、悪いことではない。



一度、白紙に戻して。

また、実力で一から勝ち取っていく。

ゼロスタート。



契約にあぐらをかいた私たちへの、いい戒めにもなった。

そう思えるくらいの、ゆとりもできた。



大丈夫。

我々は、負けない。


堤さんの柔らかい声が、私たちを鼓舞しながら、背中を支えてくれる。







わあっと、垣根の外で拍手がわいた。

おおかた、新郎新婦が仲のいいところでも披露したんだろう。



「高木さん、ブラザーだったんですね」

「半年だけな。春日部さんが途中でチームを替わったから」



わざわざ呼んでくれるなんて、律儀だよなあ、と新庄さんが笑う。



「高木が、結婚か」



煙草を灰皿の上で叩く、その顔が優しい。

新人時代でも、思い出しているんだろう。


結婚かあ。

隣の席の人が、昨日までは独身で、週が明けたら誰かの旦那さん、というのは、何か不思議だ。



「なんなんでしょうね」



結婚って。

訊くともなく、そうつぶやくと。



「結婚は、約束だろ」



あっさりと、答えが返ってきた。

面食らって隣を見ると、新庄さんが、何をそんなに驚く、といった顔で見返す。

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