オフィス・ラブ #3
「なんのですか」
「一生、一緒にいるってことだろ」
こともなげに言って、煙草を挟んだ指で、白く塗られたテーブルから、ワイングラスをとる。
水か何かのように、軽々とそれをあおる姿を、呆然と見つめた。
結婚を、そんなふうにとらえている男の人が、世の中にどれだけいるだろう。
リアリストなのか、ロマンチストなのか。
そんなふうに気負いがないと、かえって「当分考えてない」になるんだろうか。
ぽかんと見ていると、あっさり飲みほしたグラスを、くるくると回しながら何か考えている様子だった新庄さんが。
決めた、と唐突に言った。
「決めた?」
「あげたいもの」
思い出すのに、一瞬かかった。
ずいぶん、昔の話に戻ったな。
もしかして、あれからずっと考えていたんだろうか。
そういえば、クリスマスは目の前だ。
「なんですか」
うきうきと、そう訊いてみると。
新庄さんはちらっと私を見て。
グラスに目を戻した。
「指輪」